エビングハウスの忘却曲線
ドイツの心理学者であるヘルマ・エビングハウスは、「記憶」と「忘れる」の時間の関係について、実験をしています。
エビングハウスは、自ら「子音・母音・子音」からなる意味のない3つのアルファベットを、被験者にたくさん覚えさせて、その記憶がどれくらいの時間で忘れらていくかを調べました。その結果、記憶は、覚えた直後に半分近くを忘れてしまうが、残った記憶はゆっくりと忘れていき、長く保持されるものでした。
エビングハウスの忘却曲線
Curve of Forgetting カナダのウォータールー大学の研究結果
カナダのウォータールー大学の研究結果では、何も知らないところから学習し、学習したことの記憶が100%になります。学習後24時間以内に10分間の復習をすると、100%記憶が戻ります。そして、次の復習を1週間以内に行うと5分で記憶がよみがえります。さらに、1ヶ月以内に復習すれば、3〜4分で記憶がよみがえります。
記憶の関連付け
物忘れを防ぐには、記憶の関連付けが重要
東京都健康長寿医療センターで脳の老化や記憶について研究している遠藤昌吾博士は, 「日常生活で脳の老化を実感するのは, 多くの場合40代や50代になってからですが,脳の神経細胞の減少は20代からはじまっています。個人差はありますが, 毎年0.5%程度の神経細胞が失われているのです。 また, 脳の判断能力は30歳前後をピークに徐々に衰えていきます」 と話す。
神経細胞は,生まれる前後で急増し, 成人になる頃には約干数百億個ほどまでに達する。以降はほぼ増殖値せず,死ぬまで同じ神経細胞が使いつづけられる。
遠藤博士は,「物の名前を覚える際には,単に単語を覚えるだけではなく、連想ゲームのように何かと関連づけて覚えると良いでしょう。すでに脳に存在する記憶と関連づけることで, 記憶が定着しやすくなります」
と話す。たとえば,「リンゴ」を記憶しようとするときには,「赤色」、「果物」、「甘酸っぱい」など、私たちは関連した情報を同時に記憶している。
「リンゴ」について思い出そうとする際には、「赤色」や「果物」という関連した情報をたどり, 目的の記憶を引っぱり出しているのだ。
遠藤博士は,「記憶力を保つためには、一つの物事について色々な情報(五感など)を関連づけておくと良いでしょう。目的の記憶を引っぱりだすきっかけになる神細胞の回路が複数あれば, 老化によって神経細胞のつながりが弱まって, ある経路で記憶を引っぱり出せなくなっても、別の経路から思い出すことができます」と話す。
神経細胞どうしのつながりは, 使いつづけていればそう簡単には衰えない。
遠藤昌吾博士
参照:newton 2020.3月号「人体の取扱説明書」